寒波の後で

1月20日。大寒。氷点下にはならなかったものの、西風がとても強い。

少し穏やかだった昨日とはうって変わって、一時間おきにみぞれ混じりの雨が差したかと思えばお日様が現れ、めまぐるしい天気となった。

先週末の寒波による雪が、日当たりが悪くてなかなか解けなかったのだが、ようやく消え、ハーブたちも顔を覗かせ始めた。

昨年1月の寒波で大きな被害を受けて、種類によっては夏まで影響が残ったものもあったので、圃場を一回りしてチェックした。

冬の初めに、防寒しておいたレモンティートゥリーや、レモンヴァーベナも特に問題はなさそうだ。

レモンティートゥリー
レモンティートゥリー。風除けだけの防寒。上の方の葉は傷んでいるが、株元は元気そう
レモンヴァーベナ
レモンヴァーベナ。こちらも、普通落葉して丸坊主になるぐらいなのでほとんど問題なし。

先週末はマイナス3度ぐらいだったので、心配しなくても大丈夫なようだ。それなりに葉は傷んでいるが。

同じく、マートルなども、昨年ほどのダメージは少ない。その他、寒さに弱い種類もとりたてて影響はなかった模様で安心した。

カルドン
カルドン。ちょっと大きくなりすぎた

また、大雪が降ると潰れてしまうカルドンも10センチに満たない積雪では影響はなさそうだ。ただ、冬に葉が傷んでばっさり剪定することで、ある程度サイズが抑えられて良いのだが・・・。現在株幅2メートルぐらい。もうこの場所を我が物顔で占拠している。

 

雪が降って周りの雑草が枯れてしまったことで顔を覗かせたのがボリジ

ボリジ

草に覆われていた時にはわからなかったが、零れ種で案外たくさん出ていた。すでに移植が難しいぐらいのサイズに成長している。雪が降るまでは雑草の下で伸びるチャンスをうかがっていたのだろう。これからは一気に葉を広げて場所取りを進めてくるに違いない。

ブルーキャットミント
ブルーキャットミント。株元の新芽はぎゅっとひきしまって色も濃い。

ブルーキャットミントも古い枝や葉が傷んで、株元から新芽が顔を覗かせていた。天候が落ち着いたら少し剪定してやらねば。

もちろん、ラベンダーをはじめ、ローズマリーやタイムなど比較的寒さに強い種類はノープロブレムだった。

とはいえ、まだ少なくとも節分ぐらいまでは油断できない。おだやかな季節が来るのが待ち遠しい。

民族大移動

心配していた割には積雪が少なかった週末の寒波。それでも10センチほどの積雪があると日当たりがあまり良くないこの場所ではしばらくは外仕事ができにくい。

仕事の選択肢が少なくなってしまうが、こんなときには、しなくても大丈夫だがしておくと後で楽になる仕事を行うのには丁度良い。

そこで、冬の間ほとんど成長しない種類の苗をより寒さが厳しいビニールハウスに移動させる作業を行った。

寒さに強い種類は、冬の間は成長を諦めて落葉したり、さらにはあっさり地上部をぜんぶ無くして冬を凌ぐ。こういう種類はむしろしっかり寒さに当ててやる方が春からグンと成長するし、少し暖かいビニールハウスにおいていてもあまりメリットはない。

なので、始終開けっ放しでほぼ外気と同じ環境のビニールハウスで春まで過ごさせるのだ。

例えば、ホップや地上部がなくなる種類のミントなどがこれにあたる。

ただ、単に移動させるだけでなくて、少し手を加える。

苗には秋に枯れた葉が残り、株元には雑草の芽やコケが生えていることも多い

まず、枯れた枝や葉を剪定して、株元の草やコケも取り除く。

株元をきれいに掃除

湿り気が多い山陰の冬は放っておくとコケばかりが良く育つのが悩みの種。そこで、コケが生えにくいように表面をそば殻くん炭で薄く覆っておく。これでコケが生えるのが相当防げる。おそらく、そば殻くん炭のアルカリ性がコケを抑制しているのではないかと考えているが、実際のところはよく分からない。もちろん、春先に生えてくる雑草対策としても有効だ。

表面に薄くそば殻クン炭を敷く

表面を覆ってしまうと、乾き具合がわかりにくくなるのが難点だが、乾きにくいこの季節だし、土の表面が覆ってあることでより乾きにくくもなるようだ。

1ケース作業完了!

1ケース処理するのに5分ぐらいはかかるが、忙しい春になって雑草やコケを取る手間を考えると決して無駄ではない。

株元にすでに小さな芽が

処理を終えたケースは極寒のビニールハウスへ大移動。

ずらりと並んで春を待つ苗たち。春には元気に芽を出してくれるだろう。

これからしばらくこの作業が続きそうだ。

コリアンダーの親心

比較的低い温度でも発芽しやすいコリアンダー。春にむけた苗の種子もぼちぼち芽を出し始めた。

コリアンダーの発芽
二つ仲良く並んで芽を出す

コリアンダーの種子は、丸い殻の中に二つの種子が入っている。そのため普通に蒔くと、二つの芽が仲良く発芽する。なので、後で分けたり、間引きするのが面倒なら始めから二つに割ってから蒔いてもよい。

コリアンダーの種子

コリアンダーの種子
殻(下側)の中に、二つの種子(上)が入っている

コリアンダーの発芽を眺めていると、なんで二つ入っているのかいつも不思議に思う。しかもわざわざ殻の中に入れて・・・。

きっと何かの理由があるのだろう。正月の暇に任せて想像を巡らせてみた。

二つの種子が入っている殻はまん丸で、気をつけないと少し傾いたところではコロコロと転がっていってしまう。
コリアンダーの種子
植物全般に言えることだが、親が育っているところからなるべく離れた場所へ広がっていく工夫が多くの種子にある。タンポポのように飛んでいく能力を持っている種子などが代表だ。

きっと、コリアンダーの殻もコロコロと遠くへ転がるために丸くなっているのかもしれない。

「もしかして」と思い、殻ごと水に浮かべてみたら案の定プカプカ浮く。大雨が降った時にはゴムボートのように水に浮かびながら遠くへ行くことを期待しているのかもしれない。

コリアンダーの種子
水に浮かべてみた。半日経っても浮いていた

種子が二つ入っているのも、一つがうまく発芽しなかった時の保険や、共成長といって、単独で育つよりもまわりに複数の株があった方が競って成長しやすいことを狙っているのだろう。

でも、遠くへ旅立って発芽した時、寂しくないように二つの種子を入れてやった親心ではないかとつい思えてしまうのだ。

日々の発見

生き物を育てていて面白いのは、毎日のように新たな発見があることだと思う。

もう30年近く育てているハーブについてもそれは変わらない。

いままで気がつかなかったことに出会える楽しさがいつもそこかしこに潜んでいるというのは、何とも嬉しいことだ。

先日、お客様の花壇のメンテナンスに伺った時のこと。この花壇は以前、コガネムシの幼虫によって大被害を受けて、その後大幅に改良を行った。改良後一つ心配していたのは匍匐性のレイタータイムがうまく伸びてくれるかどうかであった。

理由はコガネムシ対策のために花壇の表面に厚く敷き詰めた小石。コガネムシの成虫が土に潜って産卵するのを妨ぐためのものだ。

レイタータイムは、ラベンダーやセイジなどの他のハーブに比べるとそれほど根が深くは伸びない。特に横に伸びて行った先の茎から出る根が、下の土までうまく到達するかどうかが不安だった。そもそも、朝から晩まで日が当たる過酷な場所なので、夏、焼けた小石の熱が伸び始めた根の負担にならないだろうかという心配もあった。

うまくいかないならば止むなし、他の種類を検討しようという心づもりでいた。

実際、定植後しばらくはやや足踏み状態の時期が続いた。ただこれは、コガネムシの幼虫の食害でもともとの根がだいぶダメージを受け、それから回復するのに時間がかかったせいもあるようだ。その後、ゆっくりと伸び始めた。しかし、他のハーブたちに比べると足取りは遅めだった。心配しつつも、その後は着実に成長しつつある。
レイタータイム
おおよそ、一気に成長したものは、その後急にトラブルに巻き込まれるなどあまり良い結果が待っていないのだが、時間をかけて成長したものは長く安定しやすいものだ。

今年の冬始め、以前にも増してびっしりと花壇の表面を覆ったレイタータイム。傷みやすい夏以降は、夏前と比べると明らかに見た目も悪くなりがちなのだが、今年の強烈な暑さを感じさせないような調子よさだった。

レイタータイム
今まで植えていなかったところにも徐々に広がりつつある

端をそっと引っ張り上げて見ると、長くて健康そうな根が深くまで伸びていた。梅雨や、秋雨の季節、冬初めの長雨などでも、たまった水に浸りにくく、それが功を奏したのかもしれないと考えている。

レイタータイムの根
小石をくぐり抜けて、調子よく根が伸びていた

もっと大きな砂利の上でも可能かどうかは微妙だが、比較的小さめの小石の上ならば匍匐性のタイムもむしろ良く育つ可能性が高いようで、これは一つの収穫だった。

きっと来年も新たな発見があることだろう。

気の進まない仕事

雨漏りがしてるなあ・・・。
一昨年張り替えたビニールハウスだが、今年のはじめぐらいから、ところどころから雨が漏るのが気になり始めた。

原因はいくつかある。

まず、ビニールハウスの骨組みと、ビニールがこすれやすい場所は穴が開きやすい。特にてっぺんなどの突起部分はなおさら。同じくビニールを押さえるベルト(マイカ線と呼ぶ)が当たる場所も要注意だ。

また、問題なのがカラス。ビニールハウスの上に時々止まるぐらいならまだ良いのだが、内側にいる昆虫をくちばしでつついているようだ。あんな強力そうなくちばしで突かれたのでは薄いビニールなどひとたまりもない。

そのほか、そんなに多くはないが、内側に侵入した鳥が外へ出ようとして激突したり、ハウス内部での作業中に、あやまって脚立などが当たったりというようなこともある。

2年ぐらいするとこれらの原因でビニールには結構な数の穴が開いてくる。

実際の所、冬でも結構開けっ放しだし、加温するわけでもなく、苗を育てるという点では少々穴が開いていても大きな弊害はない。

とはいえ、放っておくと徐々に大きくなるし、作業する場所の上などはやはり雨漏りはうれしくない。

なので、全てを補修するというのは大変ということもあり、作業スペースの上や、極端に大きな穴が開いたところだけの補修は必要だ。

補修テープ
ビニールハウス専用の補修テープ。幅が広く、厚め。

しかし、春から初夏はオンシーズンで忙しいし、梅雨の間は濡れていてなかなか作業ができない。夏はパイプが激熱になるので、熱くて作業にならない。涼しくなるとまた本業が忙しい。冬は寒いし風が強くて危険。・・・いろいろ言い訳があるが、つまり、気が進まない仕事なのだ。

先日、うっすらと雪が積もった。雪が徐々に溶けてくると、空いた穴からポタポタとしずくが垂れてくるのがよくわかる。作業スペースの上あたりも何箇所かあるようなので、ようやく重い腰を上げることにした。

数日後、久しぶりに晴れた日を狙ってビニールハウスの上に登る。高所恐怖症というほどではないが、先月、プロにビニールの張替えをしてもらった時に聞いた「滑り落ちて大怪我をしたことがある」という言葉が思い出される。

houserepair1
何度あがってもやっぱり怖い

上から見ると、中から見るよりはるかに多くのコケがビニールに付着している。本当かどうか知らないが、山が近くて湿り気が多いと、山から飛んでくる花粉(スギ花粉だろうか)を栄養にしてビニールの上でもコケがはえるとか・・・。

補修テープを貼るにもまずは湿らせた雑巾でコケを拭き取ってから貼らなくてはいけない。

ビニールハウスの補修
移動は慎重に

また、思ったよりも穴が空いている箇所が多く、慎重にあっちへ行き、こっちへ行きしながら補修を行う。足の裏、スネ、膝、手など、使える所を全て使ってクモのように移動する。パイプの位置からずれるともちろんビニールを突き破ってしまうので、慎重に。

ビニールハウスの補修
天気は良いが、吹きっさらしなので結構寒い。裸足も冷たいが、緊張感で寒さはあまり感じない。もちろん、ビニールハウスの上に登って写真を撮るような余裕もない。

とりあえず、今すぐ問題になる場所だけ補修を完了。30分ほどであったが、何時間も作業をした感じがして、地面に降りた時には大きなため息がでた。手も、足の裏もコケと汚れで真っ黒。スネが痛む。ジーンズやシャツも所々が黒ずんでいた。

これでこの冬はなんとか大丈夫。次に問題になる頃にはビニール全体の張替えになるだろう。ヤレヤレ。